第246回千代田チャリティ・コンサート

春のうららのクラシック
二本の弦楽器が創り出す深淵の響き

今年は穏やかな天候のなか、美しく咲いて、美しく散っていった桜を楽しむことができました。皆様もお花見を楽しまれたのではないでしょうか。コンサート当日は、肌寒い一日となってしまいましたが、多くのお客様に足を運んでいただきました。

今回は五十嵐 あさかさん(チェロ・作編曲家)、申 愛聖さん(ヴァイオリン)のお二人をお呼びして、チェロとヴァイオリンの編成によるクラッシクを演奏していただきました。「わたしはオタクなので、演奏家の人たちがこんな曲知らないよ、よく見つけたね、と言われる曲ばかりを集めてきました」と五十嵐さん。編曲も五十嵐さんご自身によるものです。

プロの演奏家でさえあまりご存じない曲が多いせいか、作曲にまつわる逸話や時代背景、当時の楽譜の構成や楽器などについてもとても詳しくわかりやすくレクチャーしてくださるので、演奏のみならず知的好奇心をも満たしてくれるコンサートでした。バッハの「フルートと通奏低音のためのソナタ・1〜4楽章」を聞いて、とても気分が良くなったと仰るお客様がおられましたが、今回のコンサートは人の心を多面的に癒やしてくれるような特徴を持っていたのではないでしょうか。
五十嵐さんが編曲し、また作曲された曲もあり、五十嵐さんの個性とセンスに申さんのヴァイオリンが見事に融合した音の世界を作っていたように思います。

弊社会長細田がお二人の演奏されるカザルスの「鳥の歌」を聞いて、「平和とは何か?」といった根源的な思い、気づきに及んだようですが、音楽はある種の気づきを与えてくれるため、癒やしがあるのかもしれないなどと愚考してしまいました。五十嵐さん、申さんの音楽にかけるひたむきさ、情熱、探究心、これらが演奏を通してわたしたちにも伝わってきたことは確実に言えるかと思います。そして、それが癒やしになったことも。
素晴らしい演奏とお話しをありがとうございました。

 フォトレポート

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第246回のテーマは、『春のうららのクラシック。二本の弦楽器が創り出す深淵の響き』。

「今年の桜はきれいに咲いて、天候も穏やかな中お花見を楽しむことができました。きょうは肌寒い一日となってしまいましたが、二本の弦楽器の音色を楽しんでいただければと思います(司会者)」。

五十嵐 あさかさん(チェロ・作編曲家)、申 愛聖さん(ヴァイオリン)のご登場。オープニングは、ヘンデルの「フラウト・トラヴェルソと通奏低音のためのソナタ(1〜2楽章)」です。「フラウト・トラヴェルソ」とは現在のフルートの前身となった木管楽器で、音はリコーダーに近い感じだそうです。

五十嵐さんのMC。「チェロとヴァイオリンによる編成の場合、ほとんど楽譜がありません。わたしはオタクなので、演奏家の人たちがこんな曲知らないよ、よく見つけたね、と言われる曲ばかりを集めてきました。それを編曲して演奏します」。

「本当のところはわかりませんが、このソナタはヘンデルが、チェリストである自分の可愛い生徒と一緒に演奏するために作った曲らしいです」と面白い逸話を紹介される五十嵐さん。「フラウト・トラヴェルソと通奏低音のためのソナタ」より3〜5楽章の演奏と続きます。

バッハより前の時代に、フランス人でリュリという指揮者でもあった作曲家がいました。そのリュリの作った「カナリエ」を2曲続けて演奏します。カナリエは曲名というより、メヌエットやサラバントというような音楽形態のひとつです。付点音符がずっと続く愉快な舞曲となります。

次はスペインのグラナドスの曲です。今回取り上げるのはグラナドスの「スペイン舞曲集」の第5番「アンダルーサ」という曲。初めに曲の一部を即興で演奏しながら、アンダルーサを演奏します。

きょうのコンサートの中で唯一ヴァイオリンとチェロのために書かれた曲で、フランスの作曲家ラヴェルの「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ・2楽章」を演奏します。「作曲家ごとに曲の終わり方のセンスが問われますが、この曲の終わり方がとても不思議なので、それまで我慢して聞いてください(笑)」と五十嵐さん。

バルトークの作曲した「ミクロコスモス」というピアノのための練習曲集は、なんと153曲の小品から構成されています。その中から「オスティナート」をジプシーバンドのタラフドゥハイドゥークス・バージョンでお送りいたします。

五十嵐さんは2年半程アルゼンチンに住んでいたことがあり、当時姉のような存在の方がいてその方の名前を曲名にした「無伴奏チェロのためのタンゴ・ルハン」を五十嵐さんが作曲しました。五十嵐さんのソロ演奏です。タンゴには様々なリズムがあり、それらを組み合わせて曲にしたそうです。一部最後の曲となります。

第二部開始です。バッハの難しさについて語る五十嵐さん。普通は伴奏者がいてメロディーを奏でる人がいますが、バッハの曲はどちらもメロディーになっていたり、メロディーが入れ替わったりします。しかも、それが楽譜にはっきりと示されているわけではなく、演奏者に委ねられています。解釈が人の数だけあるような難しさがあります。その分逆に正解のない面白さがあるようです。

バッハの「フルートと通奏低音のためのソナタ・1〜4楽章」。1楽章では物語の始まりを告げるようなゆったりした感じ、2楽章は快活で、3楽章はオルゴールを聴きながら子供の頃を思い出すような雰囲気、4楽章は現実に戻るようなイメージです。

次はTVのCMや映画でも使われているスコットランド民謡で「広い川の岸辺(O Waly, Waly)」。この曲は英国の作曲家ベンジャミン・ブリテンがテノール歌手向けに書いたものです。続けてカタロニア民謡の「鳥の歌」。これはパブロ・カザルスがピアノとチェロ用に楽譜を書いていて、普通はそれが演奏されますが、今回は少し複雑ですがとても色が出る和音バージョンでお届けします(五十嵐さん)。

ヴァイオリニストの申さんは、クラシックばかりでなく映画音楽やレコーディングの仕事が多いそうです。なんとドラえもんの映画や松田聖子さんのコンサートなどにも参加されているそうです。多彩な活動をされています。お二人の楽しい会話ももっと聞きたくなりました。

最後の曲となりました。ヘンデルの「ハープのための組曲No7」をヴァイオリニストで作曲家のハルヴォルセンが編曲し、「パッサカリア」という曲名がついています。「首が飛びそうなくらい激しい曲です(五十嵐さん)」。

弊社から花束贈呈の後は、何となく甘酸っぱい、恋の話しのような小品ということで、アンコールは「シチリアーノ」でした。これまで聞いたことのなかった楽曲を丁寧な解説とともに演奏してくださったおかげで、クラシックの世界をたっぷりと堪能できた2時間でした。ありがとうございました。

弊社会長細田敏和より皆様へ閉演のご挨拶。「カザルスの“鳥の歌”を聞いて昔と比べて今は平和になったのだろうか、平和とはなんだろうかなどと考えが及びました」。音楽によって気づきがもたらせることもあるかと思います。本日のコンサートを通して、さまざまな気づきを得たお客様も多かったのかもしれません。