第239回千代田チャリティ・コンサート

心と心が響き合う
八十八鍵の向こうに見える風景(もの)

8月はお休みをいただき、2ヶ月ぶりのコンサートとなりました。このところの長雨、そして台風と不順な天候が続いております。秋晴れの気持ちのよい季節が待ち遠しいですね。

さて、今回はピアニストの新居 由佳梨さんをお招きいたしました。モーツァルトの時代から現代まで、時代を旅するように、クラシック、ジャズ、映画音楽、ポピューラーと幅広いジャンルの曲を演奏していただきました。

新居さんはピアノの演奏力に優れていることは言うまでもありませんが、MCが実に丁寧でわかりやすいのが特徴です。音楽の専門家でもないかぎり、普通に聞いているとわからないことを演奏の前にとても丁寧に説明します。腕の重みを指先に伝え、指先は大事なものを愛でるようにそっと弾く、和音を弾くときに中心となる指をかえることでオーケストラのイメージを出すなど、これまで認識したことのなかった演奏の実際を見た気がして、聞いている側もぐっと演奏の中に入っていけたように思います。

ピアノの秘密、響板についても実際にオルゴールを載せて、その効果を実感させてくれるなど、新居さんがピアノを愛し、その気持ちを解説と演奏を通して皆様にお伝えする情熱が伝わってまいりました。

リストの「ラ・カンパネラ」、コンサート最後の曲となったガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」という迫力の演奏に熱くなり、シューマンの「献呈」ではロマンティックな気分になり、ラヴェルの「水の戯れ」では音を通して想像力を刺激され、さらにおなじみの映画音楽では懐かしい気分になり、その他にもさまざまなアングルからピアノと音楽を楽しませていただきました。

弊社会長細田の「新居さんの演奏が素晴らしくて、あともう少し演奏を聴きたかったなぁという思いです。皆様、この素敵な余韻をそのまま持って帰ってください」という思いに共感されたお客様も多かったではないでしょうか。

新居さんのピアノをとても愛している想いがハートに伝わってくる、素敵なそして癒やされるコンサートでした。ありがとうございました。

 フォトレポート

写真をクリックすると拡大表示されます

第239回のテーマは、『心と心が響き合う。八十八鍵の向こうに見える風景(もの)』。

8月はお休みをいただきまして2ヶ月ぶりのコンサートとなりました。本日はピアニストの新居 由佳梨さんをお招きして、クラシックの名曲やジャズ、映画音楽などを演奏していただきます。

弊社役員のご紹介。「社員が一丸となって頑張ってくれたお陰でこのコンサートを続けていくことができます(細田会長)」。皆様、よろしくお願い申し上げます。

新居 由佳梨さんのご登場です。オープニングは、「くるみ割り人形」より“行進曲”(チャイコフスキー)です。

2曲目は「キラキラ星変奏曲より(モーツァルト)」。この曲は実はフランスの民謡で、恋を知ってしまった女の子がお母さんに「ねぇ、ママ聞いて!」と打ち明ける話しが歌詞となっているそうです。12の変奏曲のうち、5つの変奏曲の演奏となります。

シューマンの曲について。彼の時代は自分の気持ちを曲に込める風潮に変わっていました。シューマンが愛する妻クララのために書いた曲は、歌詞がとてもロマンチックで「君は僕の魂、君は僕の心、君は僕の安らぎ、...、君がいることで僕は自分の存在を認識できる」と新居さんが言われてみたいような歌詞だそうです。

シューマンの「献呈(リスト編)」を演奏する新居さん。この時代のピアノは現代のピアノと変わらないようになっていました。腕の重みを指先に伝えて、指先でその重みを受け止めながら、音に重みを持たせて弾くそうです。

新居さんの大好きな作曲家にフランスのドビュッシーとラヴェルがいます。ドビュッシー(1862年生まれ)と同時代の画家モネの作風は、色と色と混ぜた抽象的なものでしたが、ドビュッシーはこれを音楽で実現しようとして、音と音と混ぜるということをやったのだそうです。新居さんによれば、ハーモニーに色や光を与えたイメージがあるのだとか。

ドビュッシーの「アラベスク 第1番」。この曲の弾き方は、腕の重みは指先にあまりかけません、ベルベットの布や大事なものを愛おしく触るかのように、指先は平らな感じでなでるように弾くそうです。

ラヴェルはピアノで水の音を表現しようとしました。鍵盤の高いところで水の戯れの様子を表し、一気に川の流れになるところは鍵盤の低いところまでを使って表現しています。背景に浮かんでくる川の妖精も表現しています。

ラヴェルはドビュッシーとは異なり、音の輪郭をはっきりさせるタイプなので、弾くときに腕の重みはかけませんが、指先で音の表現をします。ドビュッシーが柔らかな手の運びだとすると、ラヴェルはかっちりしたものになります。新居さんは水の音、川の音、川の妖精と何役をこなすようなつもりでピアノを弾いています。

一部最後です。リストは大ピアニストにして大変なナルシストでした。同時代に生きた伝説のヴァイオリニストのパガニーニに対抗心を燃やして、パガニーニの作った「ラ・カンパネラ」を変奏曲風に豪華に超絶技巧オンパレードでアレンジしました。

新居さんの超絶技巧の説明を聞いているだけでも、圧倒されそうに超高難度であることが伝わってきました。素晴らしい演奏に、演奏後会場が拍手の嵐に包まれました。感動をありがとうございました。

二部開始です。「この会場にいる皆様だけに、ピアノの秘密をおつたえします」ということで、ピアノの心臓部ともいうべき厚さ1cm弱の「響板」の秘密が明かされます。オルゴールを響板の上に置くと、会場ではあまり聞き取れなかった音がなんとはっきりとわかるように大きくなりました。ピアノは実に様々な部品からできているということが実感できました。

二部はジャズやポピューラー中心です。ラヴェルより少し後の時代にフランスにフランシス・プーランクという作曲家が登場します。エディット・ピアフと親交の深かったプーランクが作った曲で、「エディット・ピアフを讃えて」。本当にいろいろなドラマが詰まっている曲だそうです。

次にご紹介するのはご存じのお客様がおそらくいないであろうニコライ・カプースチンというウクライナの作曲家(存命)です。クラシックにジャズやロックの要素を盛り込んだ「8つの演奏会用エチュードよりプレリュード」を演奏します。とても短い曲です。

映画音楽を3曲お届けします。「ひまわり(ヘンリー・マンシーニ)」、「シェルブールの雨傘(ミッシェル・ルグラン)」そして「海の上のピアニスト(エンニオ・モリコーネ)」と続きます。

ガーシュインの曲が続きます。1曲目は「I Got Rhythm」、そして2曲目は「ラプソディー・イン・ブルー」。ラプソディー・イン・ブルーは本来は協奏曲としてオーケストラで演奏するものですが、今回は新居さんが一人でオーケストラの役もこなします。

ラプソディー・イン・ブルーの演奏は、和音のバランスを5本の指のどれを中心にするかで変えて弾いているそうです。「コーラスの各声部をひとりで指を使って表現している感じと思っていただければわかりやすいかもしれません」。

圧倒されるような迫力のある演奏の後のアンコールは、新居さんの大好きなプーランクの曲から「愛の小道」です。歌の曲ですが、ピアノ用に編曲しています。「とてもおしゃれで、素敵な曲です」。

弊社会長細田敏和より閉演のご挨拶。「新居さんの演奏が素晴らしくて、あともう少し演奏を聴きたかったなぁという思いです。皆様、この素敵な余韻をそのまま持って帰ってください」。皆様も細田と同じ感想を持たれたのではないでしょうか。新居さんのピアノをとても愛していることが伝わってくる、素敵なそして癒やされるコンサートでした。