第220回千代田チャリティ・コンサート

ラグタイム コンサート
ラグタイムとサティ —- 現代のポピュラーミュージックの源泉

今年最後のコンサートとなった当日は、日差しもあって暖かく過ごしやすい一日となりました。本日も大変多くのお客様に足を運んでいただきました。今回でちょうど第220回を迎えることができたのも、ひとえに熱く応援してくださるお客様のお陰です。いつもありがとうございます。


さて、今回は単にピアニストであることに止まらず、作曲、作詞、編曲、プロデュースと幅広く多彩な活動をされている音楽家の大野恭史さんをお招きいたしました。現在の私達が耳にするポップスやロックは、20世紀初頭でアメリカで流行したラグタイムとフランスのサティの音楽に源流があり、これらが融合し、さらに様々な人々がその流れに乗って活動してきた結果とも言えるものです。


今回のコンサートは、いわば現代音楽の壮大でビビッドな流れを大野さんのピアノで体験していただく趣向です。


演奏もさることながら、大野さんは演奏前後できちんと立って曲や音楽の説明を実に丁寧にしてくださるので皆さんも大分知識が増えたのではないでしょうか。ラグタイムを芸術の域に高めたスコット・ジョップリン、ラグタイムに影響を受けであろうドヴォルザーク晩年の代表作「ユーモレスク」、そのユーモレスクを聴いて作曲家を目指し、ジャズを発展させたジョージ・ガーシュインへと続く流れ。
また、ヨーロッパではエリック・サティの音楽のお陰で、いまの環境音楽、アンビエント、そしてヒーリング音楽へとつながっていく流れ。
ひとつの音楽が元となって、それを受け継ぎ発展させていく、幾世代もかかって音が紡がれて多様に変化していくストーリー、大野さんの演奏と解説を聴きながら、音楽の大河ドラマを聴いているような気持になりました。




弊社会長細田が「もの凄い迫力でビックリしました。ピアノでここまで迫力がでるとは驚きです」と申しておりましたが、ピアノ一台でありながら、迫力ある大野さんの演奏でピアノに対する認識が変わったかもしれません。本年最後を締めくくるに相応しい、音楽の流れを迫力と共に味わっていただいた2時間でした。
大野恭史さん、ありがとうございました。
お客様には、来年も変わらぬご支援、ご愛顧を賜りますようよろしくお願い申し上げます。良いお年をお迎えください。また、元気に1月にお目にかかりましょう!

 フォトレポート

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第220回コンサートのテーマは、「ラグタイム コンサート。ラグタイムとサティ —- 現代のポピュラーミュージックの源泉」。

先月は金沢出張でお休みをいただきました司会者です。三十年ほど前は蒸気機関車も見受けられのに、現在の都心と北陸を短時間で結んでしまう北陸新幹線の波及効果に驚いたそうです。

大野恭史さんのご登場です。オープニングは、大野さんのオリジナルで「Improvisation」。1曲目からトップギアの入った迫力の演奏で圧倒されました。

大野さんの本日の衣装は、ラグタイムを弾いていたアフリカ系アメリカ人はピアノを弾くと同時にウェイターもしていたそうで、それにちなんだ服装とのことです。


ラグタイムは1880年代から1910年代までアメリカではやり、独学で音楽を勉強したアフリカ系アメリカ人によって作られました。2曲目は、アフリカ系アメリカ人で歴史上最初に名を残したと言われるスコット・ジョップリン(作曲家)の代表作で「Maple Leaf Rag」。

ピアノの調律師が不足していたせいもあり、調律されないままのピアノで調子っぱずれの音で独特の味を出して演奏されるピアノをホンキートンクピアノと言うそうです。次の曲は、スコットジョップリンの初期の曲を集めた「Original Rag」。

単に流行っていたラグタイムを芸術レベルにまで高めたのが作曲家のスコット・ジョップリンです。当時は流行っていたワルツも作曲しています。曲は、「Bethena(ベシーナ)」。

次はワルツが続きます。ともに大野さんのオリジナル曲で、「Gotham City Waltz」そして「Night Waltz」。

本日のもう一人に主役エリック・サティについて。現代のBGMの概念を初めて唱えた人で、もしサティがいなかったら環境音楽、アンビエント、ヒーリングミュージックなどはなかったであろうと思われます。初期の作品で「3 Gymnopedis」。この曲はどなたもどこかで聞いたことが必ずある有名な曲で、ヒーリングミュージックの元祖のような曲です。

大野さんが熱帯雨林保護活動の曲として書いたヒーリング曲で「Lost Forest」。

大野さんは愛犬と一緒にリラックスできるCDとして、「ペットミュージックリラックス」を作成されています。ワンちゃんのリラックスできる音は、何とゆっくりとした中音域の和太鼓の音だそうで、これを聴くと伏せの姿勢で大人しくなるそうです。今回は、和太鼓抜きのピアノで「Pet Music Relax theme」を演奏します。

一部最後の曲は、大野さんのオリジナルで「Short Story」。曲名はShort Storyですが、8分くらいある長い曲だそうです。

二部最初の曲は、大野さんのオリジナルで「Vision」。本来はテクノの曲なのでピアノだけで演奏することはないそうです。

1973年のアカデミー賞を取った映画「スティング」がきっかけで見直されるようになったラグタイムの曲で、「The Entertainer(スコット・ジョップリン作)」。ラグタイムを知らなくとも、誰でも一度は聴いたことのある曲ですね。

大野さんの曲解説です。映画スティングには続編があったそうですが、スタッフやキャストも総入れ替えでまったくヒットせず日本でも公開されませんでした。しかし、曲だけはスコット・ジョップリンのものでした。演奏する曲は「Heliotrope Bouquet」。

イジメをミュージカル仕立てにした映画「暴走」で、大野さんは音楽を担当されたそうですが、その映画の中でスコット・ジョップリンの「The Easy Winner」を使いました。

次の曲は「ユーモレスク」。大野さんの独自の推論ですが、ドヴォルザークはラグタイムを聴いて、彼の晩年の代表作となった「ユーモレスク」を書いたとだろうと確信されているそうです。演奏を聴くと、なるほどと思えますね。

丁寧な曲解説をする大野さん。ドヴォルザークの「ユーモレスク」を聴いて、作曲家を目指した少年がいました、その少年は何とあのジョージ・ガーシュインです。彼はラグタイムをジャズに発展させた人です。演奏曲は初期のヒット曲で、「I got rhythm」。

この曲は、ピアノをある程度弾いている人だったら、誰でもわかるソナチネをモチーフに大野さんがラグタイム風に仕上げたオリジナルです。曲は「Rgatime Sonatine」。

エリック・サティに戻ります。彼が変人と言われるひとつの理由として、普通楽譜には小節線がありますが、彼の楽譜にはほとんど小節線が見られないことが挙げられます。逆に、彼の楽譜がたまたま劇の台本だったと考えるとよいようです。曲は「3つグノシエンヌ」。

かなり激しい弾き方をしますと予告のあったオリジナル曲「ピアノのためのリフ」、そして最後の曲は「たぶんクラシックの人は弾けないかもしれない」とジョークを交えて紹介されたオリジナル曲で「Rock'n roll Sonata 」。熱気迸るすばらしい演奏でした。

弊社会長細田敏和より閉演のご挨拶。「ヒーリング音楽で眠れるかなと思っていたら、もの凄い迫力でびっくりしました。ピアノでここまで迫力がでるとは驚きです。かなりいい刺激を受けました」。皆さんも大野さんのピアノの迫力にエネルギーチャージされたのではないでしょうか。今年一年、大変お世話になりました。皆様、よいお年をお迎えください!