第192回千代田チャリティ・コンサート

フランス宮廷歌曲の夕べ
中世吟遊詩人の歌から現代のシャンソンまで

全国で不順な天候が続いておりましたが、コンサートが開かれる頃にはやっと爽やかな五月の陽気となって、音楽を楽しむには実に気持のよい天候となりました。そのせいか、会場にはいつにも増して大勢のお客様にお越しいただきました。


今回は、中世の時代の宮廷音楽から現代のシャンソンまでおよそ800年にわたる音楽旅行を楽しんでいただく趣向となりました。オランダ、ベルギーを中心に欧州各地で活躍された古楽声楽のスペシャリスト花井尚美さん、フランス国立ストラスブール音楽院にてリュートを学び、国内外で活躍。リュートの新しい魅力を引き出す作曲活動にも専念されているリュート奏者・高本一郎さんのお二人をお招きしました。


花井さんの透明感のあり、ノビのあるハイトーンな歌声。そして、ほとんどのお客様が生で音を聴くのははじめてと思われる高本さんのリュート。両者が紡ぎ出す音楽はわたしたちを、それぞれの時代の雰囲気に包んでくれるものでした。高本さんのリュートの演奏を聴いて、「癒されました」と感想を述べた小学1、2年生がいたとのこと。


もちろん私達大人にも同じ癒しの働きがありました。長い歴史の上に培われてきた音楽には、目に見えない力があるのかもしれません。800年にわたる音楽の流れを味わうというのも、大変興味深い経験となりました。素晴らしい音楽を提供してくださった花井さん、高本さん、ありがとうございました。

 フォトレポート

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第192回コンサートのテーマは、「フランス宮廷歌曲の夕べ。中世吟遊詩人の歌から現代のシャンソンまで」。

皆様お待たせいたしました!2ヶ月ぶりに司会者に復帰いたしました。やっと本業に戻ることができて、気合い充分、笑顔全開です。

オープニングは「五月の日々も(Calenda maia)」。「ヨーロッパでは長い冬がやっと終わり、新緑の季節に入った5月をテーマにした歌が多く、今回は5月をテーマにした歌を集めました(花井尚美さん)」ランボー・ド・ヴァケイラス作(1180-1207頃活躍)800年以上前の歌です。

次はルネッサンス初期の曲、「若い娘(Une jeune fillette)」と「美しいひとよ(Ma bell si ton ame)」は元々同じ曲だったそうです。作者不詳の曲です。

「あなたに恋したものです(C'est un amant)」。花井尚美さんの日本語によるセリフから入ります。この曲も作者不詳です。

リュートはハイドンが活躍するまで使われていましたが、音が小さい、調整が難しいなどの理由から使われなくなり、その後戦前からヨーロッパで再び使われるようになり、高本さんの使っているのは「アーチリュート」と呼ばれるタイプだそうです。

高本一郎さんによるリュート・ソロ。1500年初頭の曲で、「シチリアーナ(Siciliana)」。

「麗しい五月の露で(La rosée du joly mois de may)」。フランス語による花井さんの語りが入ります。とても軽やかな感じです。ジャン・プランソン作(1559頃〜1612後)。

一部最後の曲、「花咲く日々に生きる限り(Tant que vivray)」。花井さんの透明感があって、ノビのある声が心地よい曲でした。クローダン・セルミジ作(1490頃〜1562)。

二部開始。「それは五月のこと(Ce fu en mai)」。花井さんの語りで始まります。主人公の心模様や情景を物語りしながら歌います。二部は800年前から現代まで戻る歌の旅といった趣向です。

2曲目はリュートのソロで「ガイヤール・ロマネスク(Gillarde romanesque)」。ロマネスクとは曲の形式のことで、即興部分が多く演奏されます。実際、この曲の譜面も1枚だけです。

時代はどんどん現代になってまいりました。曲は皆さんご存知の「赤い風車(Moulin rouge)」。ジョルジュ・オーリック作(1899〜1983)。そのまま「忘却(J'oublie)」と続きます。


次の曲は高本さんがホノルル・横浜間の客船で作曲したオリジナル「蒼い月」。あるとき、小学生の前で演奏したことがあり、演奏後、1、2年生の女の子から「曲を聴いて、癒されました」と大人びた感想を聞いたと心温まるお話しです。

この曲は誰もが知っているフランク・シナトラの「マイウェイ」なのですが、実は元々はフランス語によるシャンソンだったそうです。英語版では希望のある歌ですが、シャンソンでは分かれる寸前の男女の歌とのことです。「いつものように(Commo d'habitude)」。


最後の曲は、エリック・サティの「あなたがほしいの(Je te veux)」。カフェで良く歌われる曲だそうですが、これも皆さんよくご存知の曲でした。

弊社から花束贈呈後、アンコール曲は甲子園の行進曲、そしてNHK東日本大震災プロジェクトのテーマソングとしても使われている「花は咲く」。この曲をフランス語に翻訳し、見事にシャンソンに歌い上げています。当コンサートが初のお披露目となります!素敵な曲です。

弊社社長細田よりご挨拶。「すっかり疲れが癒されました。皆様も、癒されたのではないでしょうか?蒼い月の演奏の時など気持が良くて本当にこっくりするほどでした(笑)」。花井さん、高本さん、すばらしい歌と演奏をありがとうございました。