第181回千代田チャリティ・コンサート

半島と海峡—アジアとヨーロッパが交わる異国の薫り
オスマン文化が醸す独自の世界

今宵のコンサートは初めてシリーズの第三弾にしてラストとなるトルコ音楽です。ウード奏者の荻野仁子さん、サズ奏者の藤井良行さんをお招きして、皆様にはなじみの薄いであろうトルコ音楽を存分に演奏して楽しんでいただきました。


トルコ音楽固有の独特の音階、変拍子などについて、お二人で詳しくかつ丁寧に解説してくださり、皆様にトルコ音楽を理解して頂こうとする熱意がひしひしと伝わってまいりました。「トルコ音楽は、重層的に地層のように積み重なってできている音楽です」と仰る藤井さん。文化と伝統という歴史の糸を紡いでできあがってきたものがトルコ音楽なのでしょう。グローバリズムの対極にあるような、まさに民族音楽の重厚さと迫力を感じさせてくれるものでした。


わたしたちと民族は違えど、何かしら共通の想い、心の琴線に触れる何かを感じることができました。日本では江利チエミさんがトルコ音楽を歌っていたという再発見もあり、初めてシリーズが実は形を変えた再発見だったのではないかと思えました。新鮮だが懐かしくもあるトルコ音楽を演奏してくださった荻野さん、藤井さん、ありがとうございました。

 フォトレポート

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第181回コンサートのテーマは、「半島と海峡—アジアとヨーロッパが交わる異国の薫り。オスマン文化が醸す独自の世界」。

司会者より、わたしたちにはなじみの薄いトルコ音楽について複雑な説明が...。多様な音階、細かな音階が存在するとのこと。

たまたまコンサートにお越し頂いた明石市の泉市長よりご挨拶いただきました。

ウード奏者荻野仁子さんが単独で登場。オープニングは、Mohammed Abdel Wahab作、古典音楽でラクサ・アジーザ「舞曲アジーザ」。トルコの代表的な曲とのこと。生ではおそらく皆さんはじめて耳にするトルコ音楽だったのではないでしょうか。

2曲目はサズ奏者藤井良行さんによるソロで、トルコ、アナトリア地方の民謡(器楽演奏)です。まるで音の洪水のような演奏で、聴く者の心にグイグイ入ってくるような感じでした。

イステメ ババジュンというトルコ民謡です。父が娘に結婚を勧めるが娘がこれを断るというコミカルな内容とのこと。藤井さんがトルコ語で、荻野さんがスペイン語でそれぞれ父と娘の役で歌いながらの演奏です。

キースという町の民謡で「シシェル」。お酒を飲んで楽しんでいるような歌。トルコは宗教の関係でお酒を飲まない印象があるが、人口の半分はお酒を飲んでいるとのことでした。

アラブの伝承曲でランマバーダ ヤタサンナ「彼女が立ち去った後で」。10拍子の曲。荻野さんが歌い、演奏はお二人で。演奏を聴くとまさにトルコの現地の情景が浮かんでくるような感じの曲でした。

トルコの伝承曲で「ミザル バルカン」。19世紀頃の曲ですが、アメリカでサーフィンミュージックとして有名になった曲です。

一部最後の曲は、なんと日本で唯一ヒットしたというトルコ民謡で、昭和三十年代に江利チエミさんが歌った「ウスクダラ」という曲。藤井さんがトルコ語で歌い、次に荻野さんが日本語で歌うというゴージャスな構成でした。

第二部のはじめはトルコ人の琴線に触れる曲です。父の敵を取る歌で、友情あり、ラブロマンスあり、話しと歌が交互に繰り返されます。藤井さんの歌と演奏です。


藤井さん、荻野さんともにお客様になじみの薄いトルコ音楽について、丁寧に詳しく解説をして頂きました。楽器ウードについて説明する荻野さん。そして、曲はHedi Jouini 作詞作曲(チュニジア)によるタハテルヤスミン フィッリール「ジャスミンの樹の下で」。

Mansour Awadh作曲、セマーイ・サバ「マカーム・サバによるセマーイ形式曲」。アラブの古典音楽で、セマーイという形式の音階を用いたものです。藤井さんに拠れば「つかみどころのない音楽」だそうです。

Zülfü Livaneli作曲 Aysel Gürel作詞、スルギュン「追放」。1970年代の曲で、プロテストソングで祖国を追われた人々の気持ちを歌ったもの。

バルカン・トルコの伝承曲で「ロンピロンピ」。トルコ特有の変拍子、9拍子でジプシーが好んで歌うとのこと。ベリーダンスでよく使われる曲だそうです。


最後の曲となりました。Sabouk Affendi作曲、クルデリヒジャーズカル・ロンガ 「マカーム・クルデリヒジャーズカルによるロンガ形式曲」。

弊社より花束贈呈の後、アンコールで昭和三十年代に江利チエミさんが歌ってヒットした「串カツソング」を演奏して下さいました。お客様の盛大な拍手のうちに幕が下りました。


弊社社長細田よりご挨拶。「なじみの薄いトルコ音楽でしたが、耳にやさしい音楽でした」とコメント。これでボサノバから始まった初めてシリーズは一段落。次回のコンサートもお楽しみに!